きらきら星まで

シュール

手をつないで歩くことが楽しかった。サイズが違うから普段よりも意識して早く歩こうと思う。指を絡めたり腕を組んだり横顔を見詰めてしまったり、そういうことが今になって胸にしみるように思い出される。幸せだった。時々の季節の風や温度匂いとともに思い出される。
職場でパーコレータを洗っているときだったり無心になったときにすっと脳内によみがえる姿や声にわたしは何度もドキドキした。記憶にどきどきした。
いっしょにいるときはドキドキしていることを意識できないくらいに舞い上がっていた。そうしてわたしは足を引っ張っているのだろうと思った。何もできない女という価値がないのをいつまでも相手にしてくれるわけがない。寒さで手が冷たくなる。いつだって暖かい手で暖めてくれた。もちろん、知っている。それはわたしだけのものじゃない。いつもにこにこして穏やかな声で知らない話をいっぱいしてくれた。

多好感だった。

懐かしいようなはじめましてのような不思議な感覚。いい気分だった。遠いむかしに掠めたことのあるそれは離れがたいものだった。比喩でもなく狂気に踏み出しそうなほどのものだった。数ある優先順位をなぎ倒しそれだけでもいいと本能はわめく。この気持ちはいったいなんだろうと考えていた。となりで眠るということは夜中に何度目が覚めてもそこに健やかな寝顔がある。からだのどこかがふれている。眠っているのにさわっても許される。眠っていてそっと撫でられるのを感じられる。その一連が穴だらけのすかすかのスポンジに濃厚な優しさでヒタヒタにされ穴が塞がっている状態になる。グラスのふちぎりぎりまでたっぷり注がれた溢しても許される感じかもしれない。張りつめたもののない感覚。ゴムがちょうどよく存在できるようなもの。

夜に眠るときにそばにいてくれたら、夜中に目が覚めたときとなりで眠っていてくれたら。朝まであなたの体にふれていられたら、そんな夢みたいなことを願う。いてくれなくていい。いてほしいのはわがままなわたしの願望。
暖かいからだ。優しい口調。わたしの体にそっと触れる指先。あなたでいっぱいになる子宮。
官能的な刺激で快楽に溺れた後、撫でられる背中に堪えきれない、焦げ付きそうになりながらからだにしがみつく。
髪を撫でられると全身に微弱な電気が流れていくようにうっとりした。

考えても仕方のないことを考える。堂々巡りになるそれは深く心を抉りダメージを受ける。毎日毎日それを繰り返しほとほと疲れはてているのにも関わらず繰り返す作業は心と体がうまく連動していないことを意識させる。すっと一歩引きもっとシンプルなものを見つけようとするわたしとそうでないものとの戦いだ。

たどってくれるかい?ここからそこまでのルート。地図を残しておくよ。出来ればたどってほしい。遺言だから。
ここからそこへ、たどりつくまでには説明できる材料を提示できると思うんだ。難しい言葉は知らない。難しい話も知らない。少しでも興味があって何か知りたいと思ってくれるのならお願いがある。さいご、さいごのさいごにさ、何かメッセージを送ってくれるかな。そういうものが届くかもしれないと思ってはじめるのとそうでないのはまったく違うものになる。がんばるから、2021年。ぜんぶの地図が完成しますように。

星野です 不惑の年を生きます