きらきら星と

シュール

002

実家に帰りたい気持ちは無い。年々薄れていく。兄弟の1人は両親と絶縁した。それは育ててもらった恩もあるが、それ以上に自分の気持ちを守るために出ていったのだ。出ていくのも留まるのもどちらも人生だ。

わたしだって行く度に傷つくような言葉をかけられる。回復するのに1週間は要する。それでも行くのは白黒はっきりさせずにグレーのままあいまいに生きるためだ。親の介護や財産に興味はない。両親はバブル全盛期に稼いだから自分たちの死ぬまでの貯蓄はあるのではないだろうか?わたしは長男でないので多分だかいろいろな算段からは最初から除外されている。それでももしかしたら距離は近いので手伝いはすることになるのかもしれないが。絶縁して出ていった兄弟は帰ってこないだろうし葬式にも出ないだろう。相続で面倒なことになりそうだとは思うがなってからしかなにも出来ない。

盆休みに墓参りのついでに実家には寄った。1度寄ればとりあえずはいいのだ。早々に帰ろうとして昼ごはんを用意され帰りそびれた。しかし両親と話すことなどひとつもない。ひとつくらいあってもシュミレーションの段階で叩き潰される。馬鹿なことを。そんなこと。揶揄され否定される。

そしてすべての言葉を飲み込むのだ。

テレビ画面に視線を向けたまま母が言った。

「人は1人では生きていない。人をいじめるな。尊重しなさいよ」

目の前が歪むくらい瞬間に怒りが沸き起こった。わたしがいじめる?だれを?だれの尊厳を踏みにじっているの?

小さくいじめなんてしていないと呟くのが精一杯だった。許せない言葉だった。

星野です 不惑の年を生きます